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コラム
2017.07.27 Vol.7 カマーの分類に見る歯の欠損傾向(治療計画の重要性5)
Vol.4 上顎優先の治療計画(治療計画の重要性2)において、歯の欠損は上顎からの拡大が圧倒的に多いことをご紹介しましたが、今回はこれをもう少し詳しくご説明します。
前回ご説明した「宮地の咬合三角」を提唱された宮地建夫先生が、「カマーの分類」という欠損拡大の分析を行っていらっしゃいます。
カマーの分類とは、歯を6つのグループ(上の前歯6本・右奥歯4本・左奥歯4本、下の前歯6本・右奥歯4本・左奥歯4本)に分けて、欠損拡大の統計をとったものです。例えば上の図において、一番上の列の左から2番目の絵は、上の左奥歯4本が全てない人を表しています。同様に、最下段の右から2番目の絵は、上の左奥歯4本以外の歯がないことを表しています。
上の図で注目していただきたいのは、青い線で囲んだL字の箇所と、黄色い線で囲んだ逆L字の箇所です。青い線で囲んだL字の箇所は、左上から右下に行くに連れて、下の歯が優先して無くなっていくパターンであり、黄色い線で囲んだ逆L字の箇所は、上の歯が優先して無くなっていくパターンです。最終的にはどちらも最下段右端の、一本も歯がない状態に到達します。
歯を全て失った方が、青(L字)と黄色(逆L字)どちらのパターンで歯を失ったケースが多いかを調べた結果、下の図のとおり黄色のパターン、すなわち上の歯から失うパターンの方が多い結果となりました。これは、歯科医師であれば、日々の臨床を通じて感じる傾向とも合致するはずです。実際、当院においても、上顎から欠損が拡大するパターンのほうが圧倒的に多数です。
違う切り口の結果も確認してみましょう。
上の図では、先ほどお伝えした全6つの歯のグループのうち、3つのブロックの歯が無くなってしまった方のケースを抽出して比較しています。まず、一番右上と一番左下の比較です。一番右上は、上の歯が全て無くなり、下の歯が全て残っているケースで、このケースに該当する方は31名いらっしゃいました。他方、一番左下の、下の歯が全て無くなり、上の歯が全て残っているケースに該当する方は5名であり、約6倍の開きがあります。
同じく上の図で、青と黄色の線でそれぞれ9つの絵を囲んであるところをご覧ください。これは、黄色は上顎のブロックが少ないパターン、青は下顎のブロックが少ないパターンのグルーピングです。こちらも、上顎のブロックが少ないパターンが64%、すなわち約3分の2にのぼり、総じて上の歯から失うケースが多いことがお分かりいただけるかと思います。
これに加え宮地先生は、「歯数が半減し、咬合支持の質と量が低下したある時点から上顎歯の喪失が一気に加速し上下歯数のバランスが一挙に崩れる症例が多い」(上下顎の喪失歯数のバランスについて 宮地建夫 歯科学法106.1.1~4.2006)と分析しています。要するに、何本か歯が抜けて、残っている歯もグラグラしてくると、ある時を境に一気に上の歯の欠損が進んでしまうということです。
このとおり、歯の欠損は上顎からの拡大が圧倒的に多いことは、統計や日々の臨床を通しても明らかです。
ここでもう一つ、皆さまにご紹介したいことがあります。それは、前歯と奥歯の関係です。実は、前歯と奥歯はお互い補完関係にあり、この良好な関係が崩れると、歯を失う原因の一つになってしまいます。だからこそ当院では、インプラント治療においても、治療後に前歯と奥歯の良好な補完関係が築けるように、十分な検査のもと、治療計画を作成しているのです。
次の記事でご紹介する前歯と奥歯の補完関係は、インプラント治療をご検討の方だけでなく、皆さまに広くご紹介したい内容です。よろしければ、ぜひご一読ください。